Half Mile Project

「三田用水」調査ノート(資料篇)

駒場野騒擾に関する大場家文書

二二　慶応三年八月　世田谷村内の百姓家十九軒取払一件書

以書付相達候、然は去ル十四日公役衆世田谷御領分見分ニ参り被申候よし、世田谷村之内ニて御百姓家拾九軒取払ニ相成候割ニ御取極りニ相成、尤御城使方今朝承り驚入申　公役衆見分も御座候ハヽ貴様御届出可有之割ニ存候得共何之沙汰も無之今朝承り初而承知致、如何之次第ニ御座候哉否承知致し度、此段相達申候、以上、

　　八月十七日　　　　　　　　　　　勝五兵衛　　　大場弘之介殿

追而本文之次第公役衆見分ニ御領分へ被参候儀ヲ御届出無之儀ハ不都合ニ有之候間、次第柄御申越可有之旨此段も相達申候、

御書付拝見仕候、然は去ル十四日公役衆世田谷御領分見分ニ被相越、世田谷村之内御百姓家拾九軒取払ニ相成候由御城使方今朝御承知ニ相成候趣ヲ以御達ニ付、世田谷村宗八呼出承糺候処、前件之次第更ニ心得不申段申出、乍併猶得と外役人共迄相糺候上否御答可申上、不取敢貴報申上度如此御座候、以上、

　　八月十七日　　　　　　　　　　　大場弘之介　勝五兵衛様

（貼紙）

「
拾間十壱間　下畑三畝廿歩　元長三郎名　兵左衛門
七間半十三間半　下畑三畝十歩　元同人名　兵左衛門
五間三間半　下々畑拾七歩　元善左衛門名　兵左衛門　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　」

御尋ニ付書付を以奉申上候御領分世田ケ谷村役人左之名前之者共奉申上候、去ル十四日世田ケ谷御領分世田谷村之内江　御公役様方御越御見分之上、村方御百姓家拾九軒御取払之積極り候趣　御城使様昨十七日御掛合相成候由、右様之次第ニ候ハヽ其節可仰聞、尤同日下北沢・代田・幡ヶ谷三ケ村御見分相成候様子承知仕候得共、当村江　御公役様方御見分ニ御立越被遊候儀は曾而無御座候得共、当村字羽根木・代田村境縁迄は標杭相見候様子、勿論右羽根木之内御百姓拾九軒程囲込ニ相成候趣隣村風聞ニ昨今承知仕候迄ニ而、其御筋御達御座候儀ニ無之全風聞迄ニ候得共、如何ニも間近之事故此上御沙汰之程も難計、右様之次第成行候而は当惑難渋仕儀間、万一御沙汰之節御憐助之御沙汰被下置候様奉願上候、右御尋ニ付奉申上候、以上、

　　　慶応三卯年八月十八日

　　　　　　　　　　　　　　　御領分　世田谷村
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　名主　松本宗八
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同　　武川久次郎
　　　　　　　　　　　　　　　羽根木
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　年寄
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　芹沢新兵衛
　　　　御代官所様

二三　慶応三年八月　駒場原異国調練伝習場所設置一件書

今般駒場原江元付フランス国調練伝習場所ニ相成候趣ニ而去十四日　公役衆見分右駒場原而巳ニ而は御用弁不相成由、縁村八ケ村程江相跨囲込ニ相成、既ニ御領分世田谷村字羽根木地内も囲込ニ相成候哉ニも風聞有之趣別紙之通届出候間、則差出候届書入御見分、此段御届ケ申上候、以上、

　八月十九日

　　　　　　　　　　　　　　　　　世田谷
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　御代官
佐野御奉行衆中

去ル八月中駒場原江元付異国調練伝習場所ニ相成候趣ニ御座候処、同月廿六日御代官松村忠四郎様御役所江村々役人共御呼出之上御見合ニ相成候旨被　仰渡候趣ニ付、其節々申上置候処、去ル四日見分として公役衆被罷越、此度は模様替ニ相成上中豊沢両村・羽根沢村・道玄坂町・下渋谷町辺迄囲込ニ可相成候趣場所見分可被致旨被申出候処、右村町百姓・町人共惑乱致し、竹鎗并鉄砲等携口々江群集空砲相発、出役衆見分被致候ハヽ可致乱妨手筈故同日見分見合ニ相成、追々村役人共相（ママ）漸々昨六日荒増見置ニ相成候趣以　風聞書別紙之通申出候、尤御領分之儀ほ只今之処ニ而は余程欠隔り居候得共、（何脱カ）時何様之儀出来致候も難計存候間、別紙入御見分、此段申上候、以上、

兼而御届申上置候駒場原異国調練伝習場所ニ相成候儀、去八月廿六日御料所村々御代官松村忠四郎様御役所江村役人共御呼出之上、民家取払之儀は御見合ニ相成候段被　仰渡候趣、隣村役人共申聞候旨別紙之通申出候間、則差出候書面入御見分、此段御届申上候、以上、

　　　　　　　　　　　　　　　　　世田谷
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　御代官
　　　　　九月朔日

佐野御奉行衆中

　　　　乍恐風聞書を以御届奉申上候
一　今般駒場原江元付、異国調練御伝習御場所ニ相成候趣ニ而、当八月中旬頃度々場所御見分、御検地絵図面等御定ニ相成侯処、右御場所之内江民家弐百有余軒御囲込御取払ニ相成候由ニ而、百姓共惑乱難取慎村役人共歎願致候ニ付、同月廿六日松村忠四郎様御役所江村々役人共被召出、調練御場所ニ御取極メニ可相成之処、御見合ニ相成候間、其旨可存段被仰出一同安心仕居候処、去四日御見分として

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　御普請役
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　牛山源右衛門　様
御旅宿中豊沢村名主耕造方
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　永　倉　政五郎　様

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松村忠四郎様御手代
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平　塚　由五郎　様
同上目黒村名主加藤平次右衛門方
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　内　山　仙　蔵　様

右は御出役之上最初御見分之御場所御模様替ニ相成、今度駒場原上中豊沢両村・山根沢村・道玄坂町・下渋谷町辺迄御囲込ニ相成候趣、場所御見分可被遊旨被仰出候処、右村町百姓・町人共惑乱竹鎗鉄砲等携口々江群集螺吹鳴シ鯨波ヲ揚相図いたし空砲相発、御出役様方場所御立入相成候ハヽ可及乱妨手筈故同日御見分御見合、追々村役人共より相宥メ漸々昨六日荒増御見置ニ相成、御普請役両人ハ帰府御手附は今日御出立之風聞ニ御座候、尤御領分ハ只今之処ニ而ハ欠隔居候得共、何時何様之御沙汰可有之哉も難計ニ付、風聞ニ取候ニ付此段風聞書を以御届奉申上候、己上、

【註：「」は、「より」の古字】